近年、平屋の持つシンプルで快適な暮らしが注目されています。
しかし、広い土地が必要だったり、建物の配置によっては日当たりに工夫が必要だったりと、理想の家づくりにおいて検討すべき点も少なくありません。
そこで、平屋の良さと2階建ての利便性を兼ね備えた「1.5階建て」という選択肢が、新しい住まいの形として関心を集めています。
この新しいスタイルは、どのような特徴を持ち、どのような暮らしを実現できるのでしょうか。

平屋と1.5階建てはどう違う

1.5階建ての定義と特徴

1.5階建ては、文字通り「1階と2階」という構造を持ちますが、その実態は平屋に近い居住性を実現する「準平屋」とも呼ばれる住宅スタイルです。
一般的には、リビング、ダイニング、キッチンといった日常の中心となるLDK、浴室やトイレなどの水回り設備、そして主寝室といった生活の基盤となる空間の大部分を1階に集約して設けるのが特徴です。
その上で、2階部分には、子ども部屋や趣味に没頭できる専用スペース、季節物の衣類や思い出の品々を保管する収納スペースなど、比較的利用頻度が低い、あるいは特定の時期にのみ必要となる空間を配置する、といった設計がなされます。
建築基準法上は、屋根形状や構造によって2階建てとして扱われることが一般的であり、平屋とは異なり、一部に明確な階層が加わる構造体となります。

平屋との構造上の違い

平屋が地面と接する単一の階層のみで構成されるのに対し、1.5階建ては、広々とした1階部分と、その一部を活かして設けられた2階部分という、立体的な構造を有しています。
この構造によって、平屋では床面積の制約から実現が難しかった、より多様な間取りの選択肢が可能になります。
例えば、限られた敷地面積の中でも、必要な部屋数を確保したり、収納スペースを充実させたりといった、希望に沿った住まいを設計しやすくなります。
また、建物の全体的な高さを抑えつつも、一部に階層を加えることで、空間の広がりや機能性を効果的に付加できる点が、平屋との構造上の大きな違いと言えるでしょう。

1.5階建ての利点と欠点

生活の快適性を高めるメリット

1.5階建ての最大の魅力は、日常生活で頻繁に利用する主要な生活動線を1階に集約できる点にあります。
これにより、例えば洗濯物を洗濯機から物干し場へ運ぶ、あるいは購入した食材を冷蔵庫や収納へ片付けるといった一連の家事作業が格段にスムーズになり、日々の家事効率が大きく向上します。
また、将来的に年齢を重ね、足腰への負担が気になるようになった際にも、階段の昇降回数が大幅に減るため、住み慣れた家でいつまでも快適に暮らし続けることができます。
平屋に比べて土地の形状や広さといった制約を受けにくく、建物の配置を工夫することで、庭を広く確保したり、部屋ごとに採光を最適化したりすることが容易になる可能性も秘めています。
さらに、リビングに設ける吹抜けや、高窓の活用などによって、閉塞感を感じさせない開放感あふれる空間を実現することも可能です。
2階部分を、家族が集まるセカンドリビングや、個々の趣味に没頭できる専用スペース、あるいはテレワーク用の書斎などとして柔軟に活用することで、多様化するライフスタイルに合わせた暮らしを実現できる点も、大きな魅力と言えるでしょう。

建築時に考慮すべきデメリット

1.5階建ては、平屋に比べて一般的に建築コストがやや高くなる傾向が見られます。
これは、基礎や屋根の面積が平屋よりも大きくなることや、一部に2階構造を持つことによる構造の複雑化、それに伴う建材の増加などが理由として挙げられます。
また、法規上、一定以上の規模を持つ建物は2階建てとして扱われることが多く、その場合、建築基準法に基づく耐震性や構造計算といった安全性の検討が、平屋よりも一層厳格になることがあります。
設計段階で、将来的に2階部分の利用頻度が低下する可能性も十分に考慮し、無駄のない部屋数や配置を計画することが、後々の後悔を防ぐ上で非常に重要となります。

1.5階建ての住まいとは

どんな暮らしに適しているか

1.5階建ては、平屋の持つ「段差が少なく移動しやすい」「家事動線が短い」といったバリアフリー性や家事効率の良さを最大限に活かしつつ、2階建てのように空間を多目的に、そして豊かに使いたいと考える方々に最適な選択肢と言えます。
例えば、子育て世代であれば、成長に合わせて子どもに個室を与えたい、あるいは独立後の夫婦二人の生活を見据えて、将来的にコンパクトで使いやすい住まいを求めている場合にも、非常に良い解決策となります。
また、平屋では土地の広さが足りずに諦めていた方や、建物のボリュームを抑えつつも庭を広く取りたいと願う方、あるいは、他にはない個性的なデザインの住まいを希望する方にとっても、そのユニークな構造が多様な可能性を広げてくれます。

間取りや空間活用の考え方

1.5階建ての間取りを考える上で基本となるのは、日々の生活の大部分を占めるLDK、浴室、トイレ、洗面といった水回り設備、そして主寝室や、衣類や小物類をまとめて収納できるファミリークローゼット、洗濯物を干したり畳んだりするランドリールームといった、家事や身支度に関わる機能を集約した空間を1階に配置することです。
これにより、日々の移動距離が最小限に抑えられ、家事の負担も大幅に軽減されます。
一方、2階部分は、子どもの成長に合わせて個室として仕切ったり、夫婦それぞれの趣味に没頭できるプライベート空間、集中して作業できる書斎、家族がリラックスして過ごせるセカンドリビングなど、ライフスタイルや将来の家族構成の変化に応じて、必要に応じて柔軟に設けることが可能です。
例えば、リビング空間に大きな吹抜けを設けることで、1階と2階の部屋との一体感や開放感を生み出したり、2階の部屋に天窓を設置して自然光を効果的に取り入れたりするなど、空間に広がりや明るさ、風通しといった快適性をもたらす工夫を凝らすことも、1.5階建てならではの魅力的な空間演出と言えるでしょう。

まとめ

1.5階建ては、平屋が持つ暮らしやすさ、すなわち移動のしやすさや家事動線の短さといった利点と、2階建てが提供する空間の広がりや多目的活用性というメリットを巧みに融合させた、現代の多様なライフスタイルやニーズに的確に応える新しい住まいの形と言えます。
1階での快適な移動動線、日々の家事負担の軽減、そして将来的な身体への負担への配慮といったメリットは、平屋の持つ魅力を継承しつつ、さらに進化させたものです。
限られた敷地面積であっても、建物の高さを抑えながらも庭を確保したり、ユニークな形状を活かした個性的なデザインを実現したりと、従来の住宅の枠にとらわれない、柔軟で創造的な家づくりを可能にします。
一方で、平屋と比較した場合の建築コストの増加や、2階建てとしての構造上の安全基準への配慮といった、検討すべき点も存在します。
自身のライフスタイル、家族構成の変化、そして将来設計をじっくりと見つめ直し、理想の住まいを実現するための一つの有力な選択肢として、この「1.5階建て」というスタイルをぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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